コラム

COLUMN

SDGsを考慮したサステナブルな店舗デザイン

~環境に配慮した店舗デザイン~

はじめに

近年、世界中で環境に配慮した取り組みへの関心が高まってきています。その中で「Sustainable(サステナブル)」という単語が広く認知されており、多くの企業がサステナブルな取り組みを取り入れてきています。店舗デザインにおいてもエコな素材を使ったり、省エネ効果の高い技術を導入するなど環境に配慮した取り組みが可能です。
サステナブルな店舗デザインの特徴や気を付けるべきポイント、どのような素材があるのかについてご紹介していきます。

「サステナブル」とは

「サステナブル」を直訳すると「持続可能な」という意味になります。多くの場合、環境に配慮した取り組みの事を指す場合が多く「サステナブルデザイン=エコなデザイン」と言えるでしょう。店舗デザインでサステナブルを考える場合、エコな素材やリサイクル素材などを取り入れる事で化学物質などの消費を減らしたり、省エネ効果の高い照明器具や設備などを導入する事で環境への不可を減らす事が出来るでしょう。

ミシュランガイドでは飲食店や宿泊施設の新たな評価の指標として「グリーンスター」を導入しました。これはサステナブルな取り組みをしている店舗に与えられる称号で、フードロス対策や地産地消の推進などに取り組んでいる店舗などが対象となります。飲食業界やアパレル業界などでもサステナブルな取り組みが注目を集めてきており、今後「サステナブル」が店舗デザインをしていく上でも重要なキーワードになっていくでしょう。

サステナブルデザインのポイント

サステナブルな店舗デザインを考える上で大切になってくる要素について説明をしていきます。

国産品の素材を取り入れる

店舗デザインをする上で、輸入タイルや輸入家具など海外製の製品はとても人気があります。しかし海外から輸入をする場合、船や飛行機にて製品を運ぶ為、CO2などの温室効果ガスが多く発生し、環境への負荷が懸念されています。国産の素材を使用する事により輸送に掛かるCO2を削減する事が出来るようになるだけでなく、地方の活性化などにも繋がっていきます。
特に日本の木材やタイルは質の良い素材が多くあり、伝統的な素材を現代風にアレンジした物など新しい試みも推進されている為、国産素材を取り入れる事でデザインの幅も広がっていくでしょう。

環境に配慮した最新技術の導入

LED電球の登場により、照明器具の消費電力は少なくなっており、現在でも日々進化をしています。「調光制御設備」が搭載されているLED照明を新しく導入する場合「LED補助金」などを活用する事が出来る為、初期費用を抑える事も可能です。トイレや倉庫など常時人が滞在しないような場所では、人感センサー付き照明器具にする事によって、無駄な電力消費を減らす事が出来ます。
その他にもリサイクル技術の発達により、廃プラスチックなどリサイクルが難しかったような物が、家具やインテリア素材などに生まれ変わったりしています。

自然光を上手く取り入れる

複合商業施設などの館内に出店する場合は窓の無い店舗も多いですが、商業ビルなどに出店をする場合は、窓に面した店舗も多くみられます。その為、物販店舗やランチを提供している飲食店などは日中の時間帯に窓から日光を取り入れる事を前提とした照明計画が可能です。窓側に配置された照明器具とその他の場所の照明器具の回路を分ける事で、日中の営業時間帯は窓側の照明器具だけを切る事ができるようになります。そうする事により省エネによる環境負荷低減だけでなく、光熱費の削減にも繋がります。

アンティークやセカンドハンドの家具を活用する

大量生産・大量消費が当たり前になっている現代ですが、アンティーク家具やセカンドハンドの家具を積極的に取り入れる店舗なども増えてきています。一点物が多いアンティーク家具などを取り入れる事で唯一無二の店舗空間に仕上げる事が出来るでしょう。
また、家具のサブスクリプションサービスなども登場しており、家具を廃棄する事なく簡単に店舗の雰囲気を変える事が出来、初期費用も抑える事が出来るようになっています。

店舗デザインに取り入れる時の注意点

メリットの多いサステナブルな店舗デザインですが、いくつか気を付けなければならない点があります。

コストが高くなる

アンティーク家具や最新技術を使った商材などは、大量生産品などに比べると価格が高くなる傾向があります。長く使う事ができる物が多い為、長い目で見るとコストパフォーマンスは悪くないのですが、初期費用が高くなってしまうので注意が必要です。

色や柄などの統一感を出しにくい

リサイクル素材や天然の素材は大量生産品に比べて色や柄などにバラツキが出やすくなります。そのバラツキが味になる事もありますが、乱雑な印象になってしまう事もあるので、高級感を演出したい場合などには注意が必要です。

「内装制限」に注意する

建築基準法により内装に使える素材を制限する「内装制限」という規制があります。特に複合商業施設などに出店をする場合には「不燃認定品」と言われる国土交通大臣認定の素材を使用しなくてはならないという事もあります。自然素材などではこの認定を受けていない物もある為、事前の確認が必要となります。

注目のエコ・リサイクル素材

ここからは店舗デザインにも活用できる「エコなリサイクル素材」の一例を紹介していきます。

NURU DENIM

NURU DENIM

日本エムテクス社が開発した素材で、デニムを製造する際に出た端材を活用する事によって生まれた塗り材です。左官材と同じ仕組みの為、接着剤などは使用しておらず、古くなった物に水を掛けて練り直す事でまた塗り直す事が可能です。リサイクルだけでなく「リユース」まで考えたエコな素材となっています。

 

エッグペイント/エッグウォール/エッグタイル

エッグペイント/エッグウォール/エッグタイル

NURU DENIMと同じく、こちらの素材も日本エムテクス社が開発した素材で、乾燥させた卵の殻を原料としています。食品工場などで大量に廃棄される卵の殻を再利用する事により焼却や埋め立てによる環境負荷を軽減する事が期待できます。エコなだけでなく、調湿効果や消臭効果などが高く「機能性」も併せ持つ素材となっています。

 

エシカルフラワー

エシカルフラワー

生産時や輸送時などの痛みや傷が原因となり、多くの生花が廃棄されています。そんな廃棄の対象となる生花を、独自の技術によりドライフラワー化して販売しているのが株式会社ethicaが運営する「ethica lab」です。一般的なドライフラワーよりも発色などが良い状態で保存する事が可能です。
生花を取り入れるとメンテナンスや日々の水やりなどが手間になってしまいますが、エシカルフラワーではメンテナンスフリー且つお求めやすい価格で「花のある空間」を演出する事が出来ます。

 

PANECO

PANECO

WORKSTUDIO社が開発したボードで、廃棄された衣類を90%使用しており、御影石のような見た目でデザイン性も高く、下地材としてだけでなくボードのままの状態でも取り入れられる素材です。この他にも、廃棄衣類繊維と再生木材を混ぜ合わせて作ったボードなども同社から販売されています。「不燃・準不燃認定」や「防炎性能」が付いていない為、店舗の壁などに取り入れる際には注意が必要です。

まとめ

これまでご紹介してきたように「サステナブルな店舗デザイン」を取り入れるには様々な方法が存在し、その技術は日々進歩しています。デザイン的にも個性的なサステナブル素材が 増えてきており、環境への配慮などだけでなく、他店との差別化にも繋がっていくでしょう。
店内全ての物をサステナブルな物にする事はコスト面でも難しいかもしれませんが、まずは一つずつだけでも取り入れてみてはいかがでしょうか。

今回のコラムテーマ

~環境に配慮した店舗デザイン~

読むデザイン

店舗デザインには様々な仕掛けや工夫が散りばめられています。内装・家具・インテリア・建築など総合的に考えながら、目に見えるものはもちろん、空気感、匂い、温度などの目に見えない「シーンを語る」ような雰囲気づくりが大切です。STORE PALETTEでは店舗デザインをはじめとした様々な空間デザインについて独自の目線で執筆しています。