コラム

COLUMN

飲食店のゾーニング・レイアウト計画の重要性

~お客様にもスタッフにも優しい店舗デザイン~

はじめに

店舗デザインの中で最初に考えなければならないのは「レイアウト」です。その店舗の集客や売上に関わる大切な要素となります。
レイアウトを決める上で、どのように座席を配置するか、厨房面積をどれくらいにするかなど決めなければならない事がたくさんあります。いきなりレイアウトを考え始める事も可能ですが、「ゾーニング」を最初に考える事でより効果的なレイアウトを作り上げる事が出来ます。ゾーニングの考え方やレイアウトを計画する上で必要な事についてご紹介していきます。

「ゾーニング」とは

「ゾーニング」という言葉は、店舗デザインだけでなく、都市計画や大規模建築の計画時にも使われる言葉です。
対象となる空間に対して、どのような要素をどの程度の割合で配置するかを考え、その空間のコンセプトや用途をベースに考える事が必要となります。飲食店であれば「飲食をする場所」が主となる用途の為、厨房の位置や大きさ、客席の広さ、スタッフの動きやすさなどを考えていきます。

飲食店のゾーニングでは、いかにデッドスペースを作らずに、効率よく空間を使えるかが大切で、客席数や料理の提供スピードなどにも影響してくる為、売上にも大きく関わってきます。
また、ファミリー向けの大きなテーブルがあるエリアや、一人でも気軽に来れるカウンター席などを計画する事でターゲットとしている客層にとって居心地の良い空間となり、リピーター獲得にも繋がるでしょう。

ゾーニング計画で大切なこと

効果的なゾーニングを作り上げる為には、いくつかの大切なことがあります。

内装イメージやブランドコンセプトを明確にして、それに沿った計画をする

店舗デザインのイメージやコンセプトをしっかり固める事で、ターゲット層や価格帯が明確になってきます。価格帯が高めの店舗であれば、ゆったりとしたソファー席を多めに用意したり、個室を広めに取る事で価格帯に見合った空間になるでしょう。

どんなスペースが必要か洗い出す

飲食店の場合、厨房や客席は必須であり、トイレやスタッフの休憩室なども必要になるでしょう。複合商業施設の中に出店するのか、繁華街のビルに出店するのかで必要なスペースは変わってきます。複合商業施設の場合、トイレや休憩室は、施設が用意している共用の物を利用できる為、その分のスペースを厨房や客席に振り分ける事が出来ます。
商業施設のバックヤード内にレンタル可能な倉庫スペースなどもある為、店内の倉庫を最小限に抑える事が可能です。ゾーニングを始める前に出店する場所にどれくらいの共用スペースがあるのかを確認する事も大切です。

各スペースの広さを考えていく

必要なスペースを把握できたら、次にそれぞれの広さを決めていきます。まずは提供する料理や必要な厨房機器をベースにして、どれくらいの厨房面積が必要かを考えます。具体的に必要面積が算出できない場合は以下の「業種別の一般的な厨房面積の割合」を参照するとよいでしょう。

・全体の35%~45%:ファミリーレストランなど(料理の種類が多い店舗)
・全体の20%~35%:居酒屋、専門料理店(イタリアン、フレンチ、焼肉店など)
・全体の10%~20%:ラーメン店、バー、カフェなど

この割合はあくまで「一般的な割合」の目安となり、店舗の広さやメニュー構成などによっても変わってきます。

座席パターンを考える

厨房の想定面積が決まると、残った面積の大半は客席となります。客席の数は店舗の売上にも直接関わってくる為、しっかりと計画していく事が大切です。しかし、いきなり席のレイアウトを図面上で考えようとしても上手くレイアウトを組む事は難しいでしょう。まずは目安となる必要席数を算出する事がオススメです。

「客席面積(坪)×1坪当りの想定客席数=目安となる必要席数」となります。「1坪当りの想定客席数」は業種や価格帯によって異なっており、以下の数値が目安となります。

・1席/坪:高級レストランなどのゆったりとした店舗
・1.5~2席/坪:専門料理店やダイニングバーなど
・2~2.5席/坪:ラーメン店やファストフード店など

目安となる席数が決まると、どのような客席を用意するかを検討していきます。個室を用意するのか、一人でも気軽に利用できスタッフともコミュニケーションが取りやすいカウンター席を用意するのかなど、そのお店のコンセプトや雰囲気に合わせた座席パターンを考える事が大切です。
ファミリー層がターゲットに入っているのであれば、ベビーチェアなども用意すると安心して食事を楽しんでもらえるでしょう。

「ゾーニング」から「レイアウト計画」へ

厨房面積や座席パターンが決まったゾーニングを基に通路の幅や壁の位置、家具の大きさなどを具体的に詰めていき「レイアウト」をまとめていきます。店舗デザインの良し悪しは「平面レイアウトで決まる」と言われる程、レイアウトは大切です。どんなに斬新でかっこいいデザインを施していてもレイアウトがしっかり計画されていないと店舗デザインとして成功とは言えないでしょう。

レイアウト計画で気を付けるべきこと

店舗デザインで重要な「レイアウト」を計画する上で気を付けなければならない事がいくつかあります。最も注意するべきポイントは「動線計画」です。
来店客がトイレまで行く動線がスタッフのメイン動線と被らないように配慮したり、厨房と客席をスムーズに行き来できるようにするなど、来店客とスタッフの両方の視点から動線を考える必要があります。通路幅を広めに取ったり、通路の数を増やすなどの対策が取れますが、その分客席エリアが狭くなってしまう為、そこのバランスを考慮しなければなりません。動線だけでなく座席間の寸法も店舗のコンセプトや価格帯に合わせて計画しなくてはなりません。

売上アップの為に席数を増やし、席を詰め込んでしまうと隣の人との距離が近くなってしまい落ち着かない雰囲気になってしまいます。「想定客席数」と併せて座席間の寸法にも注意を向けると良いレイアウトが出来るでしょう。
また、災害時に安全に避難をする為に避難通路の確保が必要で、建築基準法や消防法により条件が定められています。

レイアウト計画に関わる法規・条例

建築基準法と消防法のどちらにも避難通路に関する条項がありますが、内容が少し異なります。

建築基準法では用途や面積によって異なりますが「1.2m〜1.6m幅の避難通路が必要である」と定められています。店舗面積が150㎡以上の時は1.2m、300㎡以上の時は1.6mとなります。

消防法では「避難の支障になる物を放置してはならない」というような条文がありますが、明確な寸法は明記されていません。しかし各市区町村の「火災予防条例」などで明確な規定が定められている地域もある為、出店地域の消防署に確認を取るのが良いでしょう。

その他に通路幅に関わる法規の中に「バリアフリー法」がありますが、対象は2000㎡を超える特殊建築物が対象となる為、飲食店に適用される事は少ないでしょう。その為、各自治体の条例により「200㎡以上の飲食店にも適用する」という物もあります。車いすが直角に曲がる為に必要な通路幅は「最低900mm」とされていますが、建築基準法を守っていれば大きな問題はないでしょう。その他にバリアフリーを考える場合は通路幅だけでなく、段差なども考慮しなくてはならないので注意が必要です。

まとめ

店舗デザインの中でもレイアウトは店舗のコンセプトや雰囲気を左右する重要な要素です。ゾーニングからしっかりと計画する事により、来店客にも働くスタッフにも優しい店舗を作り上げる事ができ、売上アップにも繋がっていきます。ゾーニングによって機能的かつ快適な店舗デザインを作り上げましょう。

今回のコラムテーマ

~お客様にもスタッフにも優しい店舗デザイン~

読むデザイン

店舗デザインには様々な仕掛けや工夫が散りばめられています。内装・家具・インテリア・建築など総合的に考えながら、目に見えるものはもちろん、空気感、匂い、温度などの目に見えない「シーンを語る」ような雰囲気づくりが大切です。STORE PALETTEでは店舗デザインをはじめとした様々な空間デザインについて独自の目線で執筆しています。