コラム

COLUMN

ファサードデザインの重要性

~「店舗の顔」を効果的にデザインする方法~

はじめに

店舗を訪れる際、必ず目に入る物は店舗の「外観」です。デザイナーの間では、外観の事を「ファサード」と呼んでおり、インテリア空間と同じくらい大切な部分です。ファサードはフランス語で「顔」という意味があり、その言葉の通り店舗デザインにおいては「店舗の顔」となります。

そのファサードを効果的にデザインする事により、集客力アップやブランディングなどに繋がっていきます。どのようにファサードをデザインすればより高い効果が得られるのか、そしてデザインする上で注意するべき事は何かについてご紹介していきます。

「ファサードデザイン」とは

「店舗の顔」であるファサードを効果的・魅力的に演出する事を「ファサードデザイン」と呼びます。「ファサード」はその店舗の第一印象を左右する大切な要素であり、集客にも直接関わる部分となる為、店舗デザインの中でも最重要な部分であると言えるでしょう。

来店客にとってファサードから得られる情報は多く、入店するかどうかの決断に大きく影響します 。「ファサードデザイン」をしっかり計画する事により効果的にターゲット層に訴求出来るだけでなく、競合店との差別化も図れます。

ファサードデザインで重要なこと

「ファサードデザイン」を作り上げる上で人々の目を引くデザインにする事が必要不可欠 ですが、ただ目立てば良いという物ではなく、道行く人達が一目で「どんな店舗なのか」を理解できるデザインにする事も大切です。効果的なファサードデザインにする為にはどのような事が重要になってくるのか、また、「このお店に入りたい」と思われるようなデザインにはどのような要素が含まれているのかについて説明をしていきます。

メッセージ性

ファサードデザインから様々な「メッセージ」を来店客に伝える事が出来ます。アパレル店舗であれば、ガラス張りのショーウインドウの中に新作の商品を飾る事でどのようなジャンルのお店なのかを明確に伝える事が出来ます。飲食店であれば「仲間とワイワイ楽しめる店舗」なのか、「接待やデートなどで使える落ち着いた雰囲気の店舗」なのかなど、ターゲットとしている客層や価格帯なども伝える事が出来るでしょう。

これらのメッセージを、色や素材の使い分けなどによって表現する事が、ファサードデザインにおいて大切な要素となります。
「ファサードデザイン」と「提供するサービス」にミスマッチがあると誤ったメッセージが来店客に伝わってしまい、効果的な集客に繋がらなくなってしまうので注意が必要です。

看板のデザイン

道行く人達が店舗を認識する上で最も重要な物は「看板」です。初めて行く店舗を探す時にはまず看板を探す事が多いのではないでしょうか。看板はファサードデザインの中でもメッセージ性の高い要素であり、多くの事を来店客に伝える事が出来ます。看板のデザインを考える上で「アイキャッチ」となる事は大切ですが、ただ目立てば良いという物ではなく、「何を伝えたいか」を明確にする事が必要となります。

「やきとり」や「ラーメン」など看板に提供している商品のジャンルやサービスの内容を入れる事により、より分かりやすいメッセージとなります。文字だけでなく、色や素材からも店舗のメッセージを伝える事が出来ます。大きな木材に文字を掘っているような落ち着いた雰囲気の看板では「老舗感」や「高級感」などを伝える事が出来るでしょう。

反対に、照明をたくさん使い煌々とした看板にする事で「賑やかな楽しい店舗」という印象を与える事が出来るでしょう。また、開店前や閉店後でも看板は掲げられる為、道行く人達に向けて常に店舗をアピールできる大切な営業ツールにもなります。

店内の視認性

ここまででファサードデザインには様々な要素があると説明してきましたが、ファサードデザインを大きく分けると「店内が見えるか(オープン)/見えないか(クローズ)」の二つに分ける事ができます。どちらにするかは重要な選択であり、ファサードが持つメッセージ性にも大きく影響を与えます。

大衆居酒屋やカジュアルな店舗では、オープンなファサードデザインにする事により店内の賑やかさや開放感が伝わりやすくなり「楽しく食事が出来そう」という印象を与えられます。反対に高級レストランやバーなどでは、クローズなファサードデザインにする事で「高級感・特別感」や「非日常感」を演出する事も可能です。

クローズにする事により外からの視線を気にすることなく、落ち着いてゆっくりと食事を楽しめる空間となります。そして、クローズなファサードにする事で、敷居を高く見せる事もブランドイメージを表現する一つの要素となるでしょう。

周辺環境との調和

他店舗との差別化の為、多少なりとも個性のあるファサードデザインにする事は大切です。
しかし、目立つ事だけを考えて周辺環境から浮いてしまうような事は避けなくてはなりません。ただ目立つだけではあまり効果的なファサードデザインとは言えません。「メッセージ性」のある個性的なデザインでありながらも、出店する街の雰囲気との調和を考える事が必要です。

ファサードデザインの注意点

店舗のファサードデザインを検討する中で気を付けなければならない事が2点あります。1つ目は条例などの法規関係、2つ目は使用する素材です。どんな所に注意をしなければならないのかを見ていきましょう。

景観条例・屋外広告物条例

日本はヨーロッパとは異なり、新しい建物をどんどん建てていく文化が根付いており、自由に新築の建物を建ててしまうと街の景観を損なう事になってしまいます。景観条例は景観法に基づき、その街の景観を保持する為に各自治体が定めた条例の事を言います。主に建築や店舗のファサードデザインに規制を設けており、京都・金沢・川越などの歴史的街並みの残る場所では特にその規制が厳しくなっています。この条例は色使いについての制限が多く、有名全国チェーン店でも例外なくロゴなどの色を変えなければなりません。

屋外広告物条例は、看板や広告の掲出に関する条例で、サイズや掲出箇所などに対して規制を設けています。看板を設置する前に事前の許可申請と申請費が必要となるので注意が必要です。景観条例も屋外広告物条例も、出店予定地を管轄する役所に行くことで規制の内容を確認し、計画しているファサードデザインに問題が無いかを相談する事が出来ます。

素材選び

店内の雰囲気が伝わりやすく、開放感の高い空間を演出できる「ガラス」はファサードデザインの中でも人気が高く、多くの店舗で使われています。しかしガラスをファサードに取り入れる際にはいくつかの注意点があります。

普通のガラスを使用した場合、簡単に割れてしまう為、台風などの災害時に割れてしまったり、防犯性能が低くなってしまいます。この問題については「強化ガラス」や「複層ガラス」に変える事で解決出来ます。

また、夏や冬の店内の温度管理にも注意が必要です。夏場は直射日光の影響を受けやすく、冷房効率が悪くなってしまう事もあります。反対に冬場は外の冷気の影響で、ガラス周りの空間が冷えやすくなってしまいます。「遮熱性能のあるフィルム」を貼ったり「複層ガラス」に変える事でこの問題は解決できます。

他の素材では、タイルや塩ビシートを貼る場合にも注意が必要です。タイルは壁面や床などに場所を問わず使われている事が多いですが、屋外での使用に適していない物もあります。各メーカーのカタログに「使用に適した箇所」が明記されているので、購入前に確認をしましょう。

塩ビシートは、ロゴなどを看板やガラス面に貼る場合に多く使われています。塩ビシートにも屋外での使用に適した「耐候性」の高い商品があり、紫外線による変色や劣化に強いのが特徴です。耐候性の無い塩ビシートを使ってしまうと、短期間で交換しなくてはならなくなるので注意が必要です。

まとめ

店舗デザインの中でも重要な部分である「ファサード」。重要だからこそ、より効果的なファサードをデザインしていく事が大切です。ファサードデザインは多くのメッセージを来店客に伝える事が出来、そのメッセージを明確に伝える事が出来れば集客力アップやブランドイメージ向上に繋がっていきます。ファサードデザインにどのような効果を期待できるのか、どのような点に注意をしなければならないのかをしっかりと理解する事で、素敵な「店舗の顔」を作り上げる事が出来るでしょう。

今回のコラムテーマ

~「店舗の顔」を効果的にデザインする方法~

読むデザイン

店舗デザインには様々な仕掛けや工夫が散りばめられています。内装・家具・インテリア・建築など総合的に考えながら、目に見えるものはもちろん、空気感、匂い、温度などの目に見えない「シーンを語る」ような雰囲気づくりが大切です。STORE PALETTEでは店舗デザインをはじめとした様々な空間デザインについて独自の目線で執筆しています。